インタビュー・ストーリー:マットはいかにしてソウルで音楽ロイヤリティのテックスタートアップを立ち上げたか | Le Wagon
長年音楽制作に携わってきたマットは、音楽業界のロイヤリティ(著作権使用料)システムが形骸化していることに気づき、コードの力で問題解決しようと決意しました。現在、韓国でベンチャーキャピタルから出資を受ける起業家となった彼に、彼自身の選択やキャリアパス、スタートアップの起業、そして直面する課題の乗り越え方についてお話を伺いました。
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16歳の時、普通の大学進学の道は選ばず、そのまま音楽制作の世界に飛び込みました。実は両親には猛反対されたんです。父はとても堅実な銀行員でしたし、母は「絶対に大学の学位は必要だ」と言い張っていました。二人とも「大学に行きなさい。そうしなきゃダメだ」という感じでしたが、自分には向いていないと分かっていました。
ただ音楽が好きでしたし、周りのみんなが楽しんでもいない退屈なことをしているように見えたので、それなら自分は好きなことに挑戦してみたい、と思ったんです。

それから4年間ほどは、音楽活動で食べていくために、朝9時から夕方4時まで文房具の倉庫で棚卸しのバイトをしながら生活していました。21歳のときに大手音楽出版社のKobalt Musicと大型契約を結ぶことができたのですが、その契約が終わると、それまでロイヤリティの管理をすべて担ってくれていた巨大なインフラを失ってしまい、自分一人でその複雑なシステムを理解しなければならなくなりました。
その後、フリーランスのプロデューサーとして活動するためにソウルへ移住したのですが、やがてクリエイティブな限界を感じ始め、音楽シーンに対するワクワク感も薄れていってしまったんです。他にも何か新しいことに挑戦してみたいと思っていた矢先、Le Wagonの存在を知りました。「コーディングって面白そうだな。どんなものか見てみよう」と思い、Le WagonのAIソフトウェア・プログラムに参加するため、東京へ拠点を移しました。
最初はかなり具体的な目標を持っていました。コーディングを学んで、Ableton Live(※音楽制作ソフト)のプラグインや仮想楽器(VST)を開発し、自分専用のデジタルツールを作りたいと思っていたんです。しかし、実際にコーディングを始めてみると、そのアイデアをさらに洗練させる必要があると気づきました。それが私の進む方向を大きく変えるきっかけになったと思います。
ブートキャンプ自体は厳しい挑戦でしたが、プログラミング言語を学ぶ感覚は、音楽ソフトで使っていたワークフローとよく似ているなと感じました。私にとって、Ableton Liveの使い方を覚えるのは、Rubyを学ぶような感覚だったんです。また、開発における「世界を構築していく(ワールドビルディング)」という側面が、映画監督がミュージックビデオの制作にUnreal Engineのようなツールを使う感覚に似ていて、すっかり魅了されました。最終プロジェクトでも音楽の領域からは離れず、ユーザーの具体的な好みに合わせてパーソナライズされたおすすめ曲を提案する、AI搭載のカラオケアプリの構築を手がけていました。
ブートキャンプの期間中ずっと、「ここで学んでいることを使って、どうすれば何かを形にできるか」を考えていました。そのため、実はまだ生徒である段階から、すでにプロジェクトの開発を始めていたんです。
最初のアイデアは、単にDAW(※音楽制作ソフト)のファイルを保存するストレージというものでしたが、それは正しい道ではないと気づきました。さらにリサーチを重ねるうちに、音楽業界がいかに閉鎖的であるかという、自分がかつて感じた不満に何度も行き着いたのです。音楽出版社や組織は、この不透明さから利益を得ていることが少なくありません。
こうして生まれたのが「handa」のアイデアです。私たちはロイヤリティのフォレンジック分析(科学的調査・分析)を行い、登録ミスによって未請求のまま世界中のロイヤリティプールに埋もれてしまっている楽曲を特定します。すべての楽曲が正しく登録されるようにすることで、お金が未払いのプールに永遠に放置されることなく、アーティストの元へきちんと届くようにしているのです。
その後、Antler Koreaが手がけるスタートアップ創出プログラムに応募しました。プログラムは非常にハードな6週間にわたって続くマラソンなようなもので、最終週には体調を崩してしまうほど猛烈に働きました。その甲斐もあり、Antlerはhandaのビジョンを信じ、出資を決断してくれました。

現時点での最大の課題は「パートナーシップ」です。米国のメカニカル・ロイヤリティ(録音権使用料)に関しては素晴らしいパートナーシップを結ぶことができ、データベース全体をデジタル倉庫に格納してクエリをかけられる状態にあります。しかし、私たちはまだまだ小さなチームのため、ドイツのGEMAのような組織にアクセスしたり、中国などの海外市場へ拡大したりすることは容易ではありません。現在はその信頼を勝ち取るために、自分たちのビジネスモデルが有効であることを証明することに集中しています。
もし、このアイデアが上手くいくかどうか挑戦すらしていなかったら、一生自分に嫌悪感を抱いていたことでしょう。今はチームをスケールアップさせながら、どんな未来が待っているのかを見届けるのがとにかく楽しみです!
お時間をいただきありがとうございました、マットさん!マットさんとhandaの今後の大いなる成功を祈っています。

この連載では、Le Wagon Tokyoの卒業生を定期的に採用しているスタートアップ、ウェブエージェンシー、大手ハイテク企業など、Le Wagonの採用パートナーをご紹介します。各社のサービスや職場環境、そして何よりも、Le Wagon Tokyoの卒業生の魅力をご紹介します。